iwanmayatakaのファイル

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「クマーラジーヴァ(鳩摩羅什)の思想的特徴」 中村元

中村元選集 第二十一巻 大乗仏教の思想』から

「クマーラジーヴァの思想的特徴」より、以下要約を記す。

 

1・顕著な現世肯定。

チベット訳では「縁起を悟ることが煩悩を止滅させる」とあるが、羅什訳では「縁起を悟ることが煩悩を道場とする」等と訳されている。「縁起は尽きることなき道場である」とも。我々の生死輪廻をそのまま肯定している。

 

2・実践を重視し、進行過程に絶対者を見出す。

羅什は「無学(すでに学ぶ必要のない阿羅漢)」を「未学(まだ学を完成していない人」)と訳している。彼によると、菩薩も阿羅漢も修学の途上にあり、学ぶこと自体が絶対の意義を有する。

 

3・日々の振る舞いの尊重。

チベット訳では「瞑想から正しい生活が生ずる」というニュアンスの箇所が、羅什訳では「正しい生活から瞑想が生ずる」とされている。

 

4.人倫関係の義務の尊重。

チベット訳では「欲を退けたことによって尊敬された」とされている箇所が、羅什訳では「義務を果たしたことによって尊敬された」となっている。前者は欲望の否定、後者は忠孝や直心といった用語を用い、ある感情を肯定的に発揮することを重視している。

 

以上、維摩経の翻訳を比較して羅什の思想を浮かび上がらせた中村先生の論考の要約。ちなみに羅什訳以外の他の中国の訳者(支謙や玄奘)による翻訳ではほぼチベット訳と同じように訳されており、相違する箇所が羅什の独創であることが分かる。

 

元がツイートなので、原文からはかなり省略された要約であることをご了承ください。